芦屋川に架かる、開森橋です。
橋の東詰めからは、右奥に道が登っていきます。
坂道の起点には、「愛称名 ライト坂」の木の看板。
今日は、「近代建築の三大巨匠」のひとり、フランク・ロイド・ライト設計の旧山邑(やまむら)家住宅に向かいます。
この住宅は、灘の酒造会社・櫻正宗八代目当主の別邸として建てられています。
坂を登り始めると、左手の木の向こうに、ベージュ色の建物が見えてきます。
すごいものを見つけました。
旧山邑家住宅の敷地を示すフェンスの手前には、「急傾斜地崩壊危険区域」の看板と標柱が立っています。
知事の許可なく形状変更ができないような急傾斜地が、ライトの設計意欲をくすぐったようです。
門です。
現在は、国指定重要文化財のヨドコウ迎賓館として、公開されています。
ライトの日本での建築で、現存するものは明治村に一部のみ保存されている帝国ホテルなど、たった4つ。
そのうち、建築当初の姿をほぼ完全に残しているのは、ここと東京にある自由学園明日館だけのようです。
竣工は1924(大正13)年。
ライトの帰国後に、弟子の遠藤新、南信らによって建設されています。
出迎えてくれる、大谷石から彫り出した大きな植木鉢。
アプローチから見た、美しい側面。
彫刻を施した大谷石をふんだんに使用した、車寄せ。
到着した客は、いきなりの展望に驚いたことでしょう。
玄関扉と照明。
玄関から、あちらこちらに、四角形をデザインした青い飾り銅板が見られます。
「有機的建築」を掲げ、自然と建築の融合を目指したライトにとって、この青い銅板は建築内に取り込んだ「葉っぱ」を表しているようです。
2階への階段。
縦長の窓上部からは、青銅の「葉っぱ」を通して、淡くなった光が射し込みます。
天井近くに並ぶたくさんの小窓から、自然光が降り注ぐ応接室。
三角形を組み合わせた、六角形のテーブルが来客を迎えます。
違い棚にも、四角形がデザイン化されています。
応接室にある、大谷石を組み合わせた暖炉。
暖炉の上部にも、縦に並べられた青銅の「葉っぱ」。
午後の光が差し込む、3階の長い廊下。
広いガラス窓には、もちろん青い飾り銅板。
ガラス越しに見える外の木々と、窓の「葉っぱ」から射し込む木漏れ日のような光。
光の仲立ちによって、外と内が一つに繋がっているような気になります。
和室の欄間にも、たくさん生えていますね。
床の間にある地袋の両サイドも、「葉っぱ」を介して光が入る構造になっています。
たくさんの天窓からも、優しく自然光が差し込みます。
美しい和室の窓。
和室の掃き出し窓。
広間に置かれた、旧山邑家住宅のミニチュア。
急傾斜地をうまく活用していることが、良く分かります。
プライベートスペースの入口天井には、三角形を組み合わせた特徴的なデザイン。
急傾斜地に合わせて建てられているため、階段は少し複雑。
家族寝室から見える、和室上部の天窓の外側。
4階の食堂。
こちらの天窓は、三角形。
そこから、照明も吊るされています。
個性的な、食堂天井のデザイン。
食堂にある大谷石の暖炉と、上部の木の装飾の取り合わせ。
室内にいて、自然を感じさせてくれるようです。
4階にある塔屋。
ちょっと、マヤのピラミッドを思い起こします。
最上部の石の彫刻は、何を表しているのでしょうか。
4階バルコニーからの眺望。
左に見える煙突に開けられたトンネルを通って、
3階バルコニーに移動します。
煙の通り道を、人の通り道にもしてしまうとは、何とも柔軟な発想ですね。
トンネルを移動中に、狭い三角の隙間から、きれいに海が見えました。
楽しい仕掛けです。
3階バルコニーからは、海の向こうの紀伊半島が、きれいに見渡せました。
普通では考えられない急傾斜地に、見事な建築を設計したフランク・ロイド・ライト。
飾り銅板やたくさんの天窓により、見事に取り込まれた自然の光。
圧迫感はないが、自然を感じさせてくれる大谷石の活用。
「有機的建築」という設計思想に、終始圧倒された感じの一日となりました。