のら印BLOG

野良猫のように街を探索し、楽しさを発見するブログ

味わいのある看板を巡る・御池通から寺町を北へ②

前回は、京都市中京区の寺町通にある商店街「寺町会」を、御池から二条まで北上しました。

今回は、この商店街を丸太町まで歩いて、味わいのある看板を探りたいと思います。

寺町二条にある、創業およそ100年の「熊谷道具處」。

この通りに多い、古美術のお店の一つです。

左から書き出している看板は、戦後のものと思われますが、なかなかの達筆です。

 

その北側には、和風建築が多いこの通りにあって、目立つ洋風建築の「村上開新堂」。

創業は、1907(明治40)年です。

正面に大きく、「村上開進堂菓舗」の切り文字看板。

昭和初期の木造建築で、アールがつけられたショーウインドウや大理石が、レトロさを醸し出しています。

これはウィンドウのサンプルですが、ロシアケーキなど、商品もレトロ感を楽しめるようです。

 

向かいにある、「三月書房」。

看板は何の変哲もありませんが、その下のシャッターがすごい。

4年前に閉じたお店ですが、在りし日の店内が見事に描かれています。

本当に、今も開いているかのように見えてしまいますよね。

厳選された本だけを並べた、濃密な空間を懐かしく思い出します。

 

「五色豆元祖 舩はしや總本店」の木製看板。

元々は煎豆屋だったため、かつては北大路魯山人が力強く書いた、「雑穀煎豆専業」の看板を掲げていたようです。

(五色豆元祖株式会社舩はしや總本店 ホームページより)

「昭和30年頃のもの」とされるこの写真では、掛かっていることが確認できますが、残念ながら今は残っていません。

五色豆が、同じく京都の伝統菓子・八ッ橋と一緒に、セットで販売されていました。

 

続いて、京漆器の「象彦 京都寺町本店」。

モダンな店構えですが、創業は1661(寛文元)年。

当初は、「象牙屋」という名前で、同じ寺町ですが綾小路に店を開いています。

3代目西村彦兵衛の作品・蒔絵額「白象と普賢菩薩」が評判を呼び、「象彦の額」と呼ばれたことから、店の呼び名も「象彦」と変わっていったようです。

看板や暖簾のロゴマークが、何とも楽しい。

愛らしい象の絵と彦の篆書体が、デザインされています。

明治頃から、使用されているようです。

 

木製看板に「御筆墨硯司」とある、書道用品の「龍枝堂」。

1781(天明元)年の創業です。

店内には、たくさんの筆が並びます。

書道パフォーマンスで使われる特大筆も、置かれていました。

 

少し北には、有名な奈良の墨匠「古梅園」の京都支店。

奈良の古梅園は江戸時代以前からありますが、京都支店は1714(正徳4)年の創業です。

店頭には、古い手動墨すり機も置かれていました。

古梅園の前には、「此附近 藤原定家京極邸址」の碑。

ほう、『新古今和歌集』や『小倉百人一首』を撰じ、『明月記』を残したあの方の邸跡が、こんなところに。

 

間口は狭いですが、丸みをつけた腰壁に古い竹板を使用した、趣のある店構えの寿司店

切り文字看板には、「寿司 末廣」とあります。

天保年間(1830~1843)の創業。

冬の京都では、蒸寿司の名店として知られています。

 

向かいには、これまた古いお茶の「一保堂」。

1717(享保2)年創業の日本茶専門店です。

もともとは「近江屋」と称して陶器なども扱っていたようですが、幕末に山階宮から今の屋号を下賜されたのを機に、「茶一つを保つ」お店になったとのこと。

黒壁には、「(入り山形に三星の家紋)一保堂」の切り文字看板。

昨年末に耐震補強をからめた改装を終えましたが、店舗は蛤御門の変による「どんどん焼け」後のもので、築150年を越えています。

店内には、お茶と和菓子がいただける、喫茶室「嘉木」も併設されていました。

 

こちらは、「古典籍 藝林荘」。

戦後すぐから、営業されているようです。

落款もある木製看板ですが、「BOOK STORE GEIRINSO」と横文字も彫りつけてあるのが面白い。

店先には、屏風絵や御朱印船絵馬の複製図などが並べられていました。

 

古書店「文苑堂」の、流れるような文字の看板。

インパクトのある文字です。

蕎麦店・寺町更科の「創業明治四十五年」と書かれた看板を過ぎると、

「こうどう」と呼ばれる革堂行願寺

そして下御霊神社と、平安時代からの寺社が続き、ここを過ぎるとゴールの丸太町通

 

もう一度、スタート地点の寺町御池のほうに戻ります。

昔ながらのエイト珈琲店で、一休み。

良く見ると、緑のテントの上部に、大きく「Eight」と書かれた形跡があります。

どうも、大きな切り文字看板があったものを、取り外した跡のようでした。

お店北側の上部も、同じ。

壁を塗り直すさいに、取り外したのかも知れませんね。

名前は消しても、お店は健在です。

ちょっとほの暗い、落ち着く店内。

マスターのいるカウンターの上には、ステンドグラス。

おいしいコーヒーをいただいて、この日は終了です。

 

寺町通のこの周辺は、江戸時代から文化的なエリアとして続いてきたのでしょう。

さりげなく古いお店が並ぶ通りからは、培われた歴史の香りが漂ってくるようでした。

 

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