阪急電鉄で、神戸市灘区にある王子公園駅に来ました。
駅の西側に、紅葉した王子公園の木々が見えます。
公園のメインは、やはり神戸市立王子動物園。
ジャイアントパンダは、体調管理のために見ることができませんでしたが、レッサーパンダは元気です。
カバくんが、ゆったりと水に浮かんでいたりもします。
遊園地の背後には、摩耶山。
そんな動物園の一角に、裏葉色の瀟洒な洋館が保存されています。
重要文化財に指定されている、木骨煉瓦造の旧ハンター住宅。
もともとは、1889(明治22)年頃、ドイツ人のA・グレッピーがイギリス人技師に依頼し、異人館の多い北野町に建てたもののようです。
これを、イギリス人商人であるE.H.ハンターが1907(明治40)年に買取り、改築。
現在地には、1963(昭和38)年に移築されています。
三角形のペディメントには、唐草模様。
そして、各窓にあしらわれた、特徴的な形状の白い窓枠。
窓の下には、木の列柱による装飾が並びます。
西側には、塔屋とエントランスがありました。
おや、カピバラやリャマの向こうにも、洋風建築が見えます。
煉瓦造なのに、和調のいぶし瓦が葺かれているようです。
ただ、こちらの建っている場所は、動物園の敷地の外。
動物園を出て、ぐるっと表にまわると、石垣に「關西學院發祥之地」と刻まれています。
動物園から見えていたのは、1904(明治37)年竣工の、関西学院大学の初代チャペルでした。
イギリス人M.ウィグノールの設計による、神戸市内に現存する最古の煉瓦造教会建築だそうです。
神戸大空襲によって大破しましたが、その後修復が繰り返され、現在は王子公園内の神戸文学館として使われています。
竣工当時の古い煉瓦も残ります。
旧礼拝堂の正面階段に使われた飾り石。
最も修復が遅れた塔屋。
屋外なのにシャンデリアがある、エントランス。
天井は、ハンマービーム・トラストとよばれる、大きなアーチ型の梁で支えられています。
尖頭アーチ型の窓。
窓には、葡萄の木の模様が、美しく復元されています。
煉瓦積みの煙突もありました。
神戸文学館を後にして、王子公園駅の東側へ。
神戸でも規模の大きな商店街のひとつ、水道筋商店街を目指します。
水道筋という面白い名前は、大正時代に西宮から引かれた水道管の上に、通りが作られたことからきているようです。
駅から東へ少し歩くと、西郷川という小さな川。
橋をこえると、水道筋6丁目商店街が始まります。
灘は、水の美味しいところなので、豆腐店が多い。
まずは、佐藤とうふ店で、濃厚な豆乳110円をいただきました。
まもなくすると、エルナード水道筋商店街のアーケード。
いくつもの商店街や市場が細かく連なる水道筋で、一番賑やかな通りです。
中は満席の、地元で人気の喫茶ドニエ。
ちから餅さんの店頭では、美味しそうな揚げかまぼこを販売。
懐かしげなレコード屋さんは、閉まっていました。
商店街横の路地には、魅惑的な佇まいの串カツ一燈園。
入らない手はありません。
良心的な価格で、ラードの甘い香りがたまりません。
高齢のご夫婦と、娘さんで回しておられます。
お店は、1950(昭和25)年から、この場所で続けられているとのことでした。
ちょっと懐かしい「パーマ まや美容院」の看板。
「美」の文字が、ちょっと不思議。
南北に走る、灘センター商店街と交差します。
お店を何軒か合わせたと思われる、大きく安そうな青果店。
表具師さんのお店もあります。
灘中央筋商店街との交差。
たまらなく良い出汁の香りが漂う、うどん屋さん。
今では見かけることが少なくなった、ミシン屋さん。
賑わうたこ焼き屋さんの向こうは、ボタン屋さん。
アーケードは終わっても、商店街は水道筋1丁目商店街として続きます。
「水道筋で酒屋一筋96年」の酒屋さん。
炭焼きうなぎと川魚の居相商店さん。
おいしい鰻巻き5切れを、300円でいただきました。
商店街の東端には、源泉かけ流しの灘温泉。
大人450円の銭湯料金で入れます。
ユニークな提灯の、猫がシャワーを浴びる絵がかわいい。
ここで折り返し、少し北側の、細い路地が連なるエリアも見ていきます。
閉まっているお店も多い畑原東商店街や、
東畑原市場や、
畑原市場。
そのような中にあって、健闘ぶりが目立つのが灘中央市場。
二本の通りからなるこの市場の創業は、1925(大正14)年。
あと少しで、100周年を迎えます。
プロの業者も立ち寄る、鮮魚店が目につきます。
店頭には、明石産こちや、活サワラのあぶり、伝助あなごなど、楽しい魚種が並びます。
珍しいあなごの肝煮を、200円で購入。
市場内のイートインコーナーで、いただきました。
空き店舗の場所をうまく活用しているのが、この市場の特徴。
市場内で買った食材を紙皿に盛りつけ、イートインコーナーで食べる「紙皿食堂」といった企画もあるようです。
市場内の空き地を活用した、「いちばたけ」という名の、住民が自由に参加できる菜園もありました。
あちらこちらで、イベントや企画を応援。
人の繋がりを大切にしようとする意図が、随所に窺えます。
狭い路地にフレンチレストランがあるのも、生鮮食材が豊富なためでしょう。
二本の通路が、一つにまとまる辺り。
細い通路の魅力的な曲がりは、ちょっと迷宮感を漂わせています。
地面の高さが均一でない、不思議。
今でも10円玉を入れると動く、戦車とハトの子供用遊具。
「戦争と平和」なのですね。
なんとも面白く、元気がでる市場です。
頑張っている市場を見ると、嬉しくなってきます。
今日は、楽しい商店街に出会うことができ、良い街歩きとなりました。
さて、この後は、後方に見える摩耶山に向かいます。