前回からの続きです。
神戸市灘区の水道筋商店街にある、魅惑的な串カツ一燈園さん。
その前の通りから北を見ると、向こうに摩耶山が少し見えています。
今日は、目の前の坂を登り、この山の頂を目指します。
まっすぐに坂を進むと、左手に小学校。
神戸市立摩耶小学校です。
公立の小学校には珍しい、優美なデザインのエントランス。
尖頭アーチ窓が並び、
その上部には、美しいステンドグラスが配されています。
もとは、1929(昭和4)年に、神戸市立西灘第三尋常小学校として開校しています。
設計は、阪神間モダニズムを代表する建築家のひとり、古塚正治。
宝塚ホテルや六甲山ホテルも手掛けています。
改修は施されていますが、当初の雰囲気は残されているようです。
このあたりでは、個人宅の塀や屋根も美しい。
坂の町である神戸。
見下ろすと、海が良くみえます。
ここから、やはりレトロな外観を残す、神戸高校を目指します。
神戸高校の正門に向かう、通称「地獄坂」。
兵庫県立神戸高等学校の正門。
OBとして、戦後活躍した白洲次郎や、作家の村上春樹、小松左京らを輩出している名門校です。
三連アーチの、優雅なエントランス。
1938(昭和13)年に南欧風古城のイメージで建てられた校舎は、現在も正面玄関を中心とした四分の一が残されているようです。
屋上手すりに銃眼のある、お城のような塔屋。
塔屋は、ロンドン塔と称されているようです。
設計は兵庫県営繕課ですが、公立高校とは思えない雰囲気のある建築でした。
このあたりは、さすが神戸ですね。
神戸高校の裏手にまわると、すぐに摩耶ケーブル駅があります。
階段を昇っていくと、
山の色に溶け込んでいきそうな、黄緑色のケーブルカーが待ってくれています。
後ろには急勾配のレールが見えて、わくわくしてきます。
美しい木々の迫る急坂を、力強く登ります。
トンネル内では、光のアーチが連続。
約5分で、中間駅である虹の駅に到着。
紅葉した森の狭間を、登ってきました。
駅は、1925(大正14)年に建設されていますが、現在の建物は戦後まもなく再建されたものでしょう。
駅からは、間近に大きな廃墟ビルが見えます。
「廃墟の女王」ともよばれ、廃墟でありながら国の有形登録文化財に指定されているという、珍しい旧摩耶観光ホテルです。
竣工したのは、1930(昭和5)年。
設計は、甲南高等女学校などを手掛けた今北乙吉。
駅側の側面にも、最上階の左右に、アール・デコ調の丸窓が二つ確認できました。
ロープウェー駅に向かうため、ここから少し歩いて移動。
途中には、「山上茶店跡」の碑。
かつては、茶店や射的場などが数軒あったようです。
ロープウェーに乗り換えると、絶景です。
こちらからも、「廃墟の女王」が見えます。
眺めの良いホテルだったことは、間違いなさそうです。
約5分で山頂にある星の駅に到着。
掬星台(きくせいだい)からは、紅葉する摩耶山の向こうに、神戸の街はもちろん、湾をこえて大阪の街も一望できます。
日没後の美しい夜景。
函館市函館山、長崎市稲佐山の夜景とあわせ、日本三大夜景に数えられています。
月にかかっていた雲が、途切れました。
やがて、月はくっきり。
摩耶山麓のレトロ建築を眺めがてら、山頂からの絶景を見に来ることができました。
ちょっと寒かったのですが、我慢するだけの価値は十分。
神戸は、どの切り口から見ても、絵になる良い街ですね。
今日もまた、楽しい街歩きができ、良い一日となりました。