のら印BLOG

野良猫のように街を探索し、楽しさを発見するブログ

滑石越で山科から九条湯カフェへ・京都市

良い天気なので、京都市の山科盆地から自転車で東山を越え、南区にある九条湯カフェを目指します。

途中、10月に西京区から京都駅東側に移転予定の、京都市立芸術大学の様子も見てみようと思います。

滑石新大石道の交差点。

山科盆地から京都盆地に入るには、三条通り、五条通り、大岩街道などのルートがありますが、もっとも道が狭く交通量も少ないのが滑石越(すべりいしごえ)です。

右側の道が、忠臣蔵で知られる大石内蔵助の隠棲地に通じる新大石道。

左側の道が、滑石越になります。

道沿いには、旧家も残ります。

登り坂を少し進むと、漂う独特な甘い香り。

香木?と思っていたら、

漢方薬を製造しておられる、池田薬刻さんの工場でした。

この辺りからは、山科盆地と醍醐の山並みが望めます。

竹藪が覆いかぶさるような狭い道を進みます。

つづら折れの急坂。

カーブにある金網フェンスの横に、「この付近西野山古墓」の石柱。

平安初期の有名な征夷大将軍坂上田村麻呂の墓と推定されています。

1918(大正7)年に発見され、鏡や金装の大刀などが出土したようです。

登り坂の擁壁に埋め込まれた地蔵堂

左側には東山テニスクラブ。

坂のピークにある、廃業したゴルフ場の門。

下っていくと、真宗大谷派の延仁寺。

浄土真宗の開祖・親鸞聖人が、荼毘(だび)にふされた場所です。

「私が死んだら、賀茂川へ捨てて魚に与えよ」と言ったと伝えられる親鸞ですが、周囲はそうはしなかったようです。

このあたり、道は一時的に広くなります。

遠くに見えるのは京都タワー

花と果樹の東山ガーデンへの階段と、カフェ。

日吉南道と交差する角にある煙草店。

アイスクリームや駄菓子も置いていました。

右手には地蔵の祠があります。

狭い道では、横の家との間に大きな段差。

地蔵堂のあるJIZO HOUSE。

外国人観光客向けの宿泊施設なのでしょうか。

格子のある町家。

この辺りに多い、陵墓への道標。

鳥戸野陵(とりべのりょう)は、清少納言が仕えた藤原定子の墓です。

平安時代の京都最大の葬送地であった鳥辺野は、清水寺の南側から、九条通にも近いこの辺りまでを含んでいるようです。

左手は地蔵堂、右手はキッチンイトウ。

古い道では、地蔵堂はいたる所にあります。

御菓子司つるき餅本舗。

奥に見える家は、屋根に煙出しが見えます。

台所には、「おくどさん」が残っているのでしょうか。

そばぼうろの総本家澤正老舗。

民家の隙間に、生活感のある路地があります。

柴漬けで有名なニシダヤさんは、お客さんで込み合っています。

東大路通に出ました。

右手に、いまくまの商店街の小さなアーケードが見えます。

ここまでが滑石越。

 

ここからは、東大路通を少し北へ。

今熊野橋で、東海道新幹線東海道線を越えます。

塩小路通と交差する角を、西に曲がります。

京都駅前にある京都タワーが、だんだん大きく見えてきました。

途中、ちょっと気になる洋風建築も。

フルーツタルト専門店として、利用されているようです。

蓮華王院南大門。

本来は、豊臣秀吉が建て、大仏殿があった方広寺の南大門です。

塩小路橋で、鴨川を渡りました。

越えてきた東山が見えます。

橋のたもとには、昔の塩小路橋の親柱。

この辺りから、10月移転予定の京都市立芸術大学のエリアが始まります。

こちらは、いち早く移転してきた京都市立美術工芸高等学校。

移転にあわせ、銅駝美術工芸高等学校から名称変更されています。

少し須原通に入って、芸大キャンパスを見ました。

面白い光景です。

手前と奥の新しい芸大の校舎の間に、古い萌黄色の木造建築がはさまれています。

柳原銀行記念資料館です(奥は芸大校舎)。

1907(明治40)年竣工で、木造の銀行建築としては現存する最古のものの一つだそうです。

この銀行は、日本最大規模の同和地区であった崇仁(すうじん)の住民が、産業の振興や教育の向上のために、自ら設立しています。

ちなみに、ほど近い七条河原町角には、大正時代に部落差別からの解放をめざして結成された全国水平社が、事務所を置いていたビルも残っています。

柳原銀行記念資料館の敷地には、「銭座場跡」の碑もありました。

江戸時代には、この近くで寛永通宝や宝永通宝が鋳造されていたようです。

塩小路通にもどると、でき上がった芸大校舎の前で、立ち退き後の住宅の解体作業が行われていました。

何か順序がちがうような気も・・・

 

さて、ここからはJRの線路を越えます。

京都駅の南側から竹田街道に入り、

角に石臼のある、見落としそうな細い道を東に入ります。

ありました。

今日の目的地、九条湯カフェです。

1930(昭和5)年頃の建築で、2008(平成20)年まで銭湯として営業されていたようです。

唐破風がある、立派な銭湯建築。

男女別になった引き戸を開けると、使い込まれた懐かしい番台。

天井は、格式の高い建築に用いられる折上格天井(おりあげごうてんじょう)。

天井の縁が、まあるく処理されています。

脱衣所も含め、できるだけ元の姿に手をつけずに、カフェとして使用されています。

それにしても、様々な種類のタイルを活用した銭湯です。

凝っていますねえ。

こちらでは、ミックスフライオリジナルプレート950円を注文。

有頭エビフライ、カニ爪のクリームコロッケ、アジフライと中身も充実。

スモークしたポテトサラダとナッツの組み合わせも、美味しくいただきました。

今後、芸大の学生たちも周囲に住み始めると、さらにこのアートな空間は充実していくのでしょうね。

 

この後、九条湯で見たタイルに触発されたこともあり、かつて美しい泰山タイルを製造していた泰山製陶所の跡を探しに行きました。

平安京の南東隅にあたる、九条南橋です。

川は、工事で水がせき止められていますが、あの木屋町で美しい姿を見せている高瀬川下流になります。

背後の住宅地は、かつて泰山製陶所があった辺りと思われますが、今は何の痕跡もありませんでした。

 

帰りには、かわいらしい野良猫くんにも出会いました。

 

予想をこえて、たくさんの発見があった滑石越。

芸大の進出によって、変化が現在進行形の京都駅東側。

凝った建築が、有意義に保存活用されている九条湯。

今日も、良い街歩きができました。