のら印BLOG

野良猫のように街を探索し、楽しさを発見するブログ

脇道に風情を残すかつての「西の心斎橋」・九条商店街

大阪市西区に、九条という町があります。

地下鉄なのに地上高くを走る大阪メトロ中央線で、「九条駅」に来ました。

駅の東西どちらにも商店街のアーケードが見えますが、まずは東側から。

「ナインモール九条」のアーケード西口があります。

メタリックで、ちょっと要塞を思わせるデザイン。

商店街入口の上の方には、「名門九条ОS」の電飾看板。

10年以上前に閉鎖された、オジサンたちの劇場のようです。

入口から、昔の面影を残しているのが、この商店街らしいのかも知れません。

(ナインモール九条のHPより)

この写真は、戦前のナインモール商店街辺りの風景。

映画館や寄席、劇場なども多く、百貨店も軒を連ねて、「西の心斎橋」と呼ばれるほどに賑わったようです。

現在は、京セラドーム大阪のお膝元。

アーケードには、オリックスバッファローズの垂れ幕が、大きく吊るされています。

メインの通りは広くて人出も多いのですが、この商店街の魅力は交差する脇道。

脇道にある、「古本 昭和書籍」の黄色いテント。

北側の脇道の向こうには、空襲による焼失後に少し東から移転してきた、松島新地が見えます。

営業中の提灯が下がる、細い路地。

時間が止まっているかのような佇まい。

暗めの路地が似合う飲み屋さんも、並んでいます。

松田優作の狂気」や中島貞夫監督追悼特集のポスターを貼り出している、「シネ・ヌーヴォ」。

今も「ヌーヴォ」と呼べるのかは分かりませんが、気になるミニシアターです。

メインの通りに戻ると、床面に大きく「中央付近の駐輪禁止」。

きちんと?、禁止表示からは少し離れて自転車は停められています。

この辺りでの買い物の足は、やっぱり自転車。

脇道には、「自転車病院」もありました。

アーケードの東口を出ると、九条新道の交差点。

大阪港へと至る広い「みなと道」を越えると、

信号機の横に、「大阪市電創業の地」の碑。

1903(明治36)年に、ここから築港埠頭まで、日本で最初の公営による電気鉄道が開業しています。

九条に人の流れを呼び込んだ市電。

当初は、二階建て電車も走っていたようです。

 

もう一度、スタート地点の九条駅に戻ります。

駅の西側に、もうひとつのアーケード商店街である「キララ九条」が見えてきました。

ナインモールよりは少し狭い通路の上には、星と月のマスコットキャラクター。

たこ焼きとホルモン焼の2強を提供してくれる、B級グルメ一筋の「今井商店」。

味噌味の新鮮なホルモンがたくさん入った、ホルモン焼きそばがおいしい。

角の焼鳥屋の奥のお店は、もう営業していないのだろうか。

古いうどんと蕎麦のお店だったようです。

格子窓から突き出した古い木組みの看板も、「東京庵」という店名も、過ぎ去った時間の長さを感じさせてくれますね。

脇道にある「親栄会商店街」への分岐。

商品が狭い通路にせり出し、道幅はさらに狭く感じられます。

上の方には、「下町市場」の看板も。

仄暗い通路を照らす、クラシックな照明灯が良い感じ。

「手造りとうふ 森正商店」。

生ゆばを造る、濃い豆乳をいただきました。

北側に抜けると、「親栄会」の看板。

アーケードが終わっても、昭和の家並は続きます。

一筋西側の脇道には、並行して「祝生会」のアーケード。

白地の看板に、ただ赤い文字で書かれただけの商店街名が、ありそうでないインパクトを感じさせてくれます。

やはり、少し暗めの通路。

西内製麺所の幟には、「創業大正8年」の文字。

九条商店街が「西の心斎橋」と呼ばれた時代に、立ち会ってきたお店なのでしょう。

趣のあるアーケードのうねりは、良いですね。

脇道の、さらに脇道。

2階の窓手摺りが渋い。

えっ、こんなところに顔出しパネル?

脇道から、「キララ九条」のアーケードに戻ります。

上にあるのは、大衆演劇の垂れ幕。

大衆演劇 九条笑楽座」の劇場は、一筋南にありました。

かつては多くの劇場があったと言われるこの界隈も、今ではこの1軒になったようです。

脇道にある、清水屋商店の木製看板。

「九條 リハツ タカセ」の切り文字袖看板も、味わい深い。

路上には、珍しく猫さん。

ちょっとだけ振り向いて、行ってしまいました。

どうしても入りたくなってしまう風情の、町中華「大連閣」。

入店すると、年配のご夫婦で経営されている、6人程が座れるカウンターのみのお店でした。

餃子は、注文してからお母さんが麺棒を使い、皮から作ってくれます。

お店の外観だけでなく、料理もとても良い感じ。

この日2食目となる焼きそばは、茹でた麺を炒めるので、焼きラーメンのよう。

お父さんが振っていた中華鍋を、いつの間にかお母さんが振っていました。

まさに、これが阿吽の呼吸か。

お母さんの話では、この地で店を始めて56年になるとのことでした。

アーケードに戻ると、「ヘアーサロン アーム」。

入口は、細い路地の中にあるみたい。

テーラーは、シャッターが下りています。

かつての賑わっていた頃には、背広を仕立てるお客さんも多かったのでしょう。

やがてアーケードは、全蓋式から歩道の上だけの片側式に変わります。

そして、「源兵衛渡」の交差点でおしまい。

「源兵衛渡」ということは、その先には安治川。

次回は、安治川を越えて、西九条を目指したいと思います。